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スペシャル

「バジリスク ~桜花忍法帖~」リレーインタビュー 第2回
シリーズ構成 大西信介

—シリーズ構成として参加されると決まって、まず最初に思ったことを教えてください。
大西前作(『バジリスク ~甲賀忍法帖~』)の脚本を書かれた岡田麿里さんからの紹介で参加することになったのですが、前作がとてもいい作品でしたので少しプレッシャーを感じました。ただ、前作に勝つとか負けるとかではなく、『バジリスク ~桜花忍法帖~』を作品としてまた愛してもらえるように作りたいと思いましたね。

—監督とはどのようなことを話し合われましたか?
大西主人公たちの幼少期を膨らませつつ、原作の流れを生かしていこう、と申し合わせました。山田正紀先生の作品は哲学的な香りがあって『桜花忍法帖』も形而上的な表現がたくさんあります。でも、そういった部分も絵でしっかりと伝えられるように、ということを話し合いました。あとは、忍術を使うシーンが多いのですが、例えば、孔雀啄の時間がさかのぼる忍術”時逆鉾”のような理屈づけが難しい技も、少なくともスタッフ間では納得できるような一応の理屈は考えたり、話し合ったりもしましたね。

—2クール作品ですがどのようにシリーズを構成しようと考えましたか?
大西前半は子ども時代から話が始まりますがそこで1回目の山があり、中盤以降、過去の話を交えつつ、クライマックスに向かって戦いが繰り広げられる、という構成ですね。さらに、監督は山場の戦いはたっぷり見せたいという意向だったので、最後までアクションや対決といった見どころを用意しています。あと、前作とつながるキーポイントとして、忠長の生き方も原作から少し話を膨らませて書いてはいます。

—『バジリスク』の戦いというと「チーム戦」が魅力です。
大西そうなんですよ。ただ、前作は潰し合うことで徐々に人が減っていくという流れでしたが、今回はチーム戦といいつつも前作とは違う構図になっています。その中でキャラクターの関係性を丁寧に描き、面白がって見てもらえれば、と思っています。そのためにも序盤で八郎、響たちの子ども時代を描き、「この子たちが大人になってから活躍するんだ」というキャラクター説明となるような構成にしました。

—エピソード作りで苦労した点はありましたか?
大西忍術によって無敵にならないとか、どうやって倒すかとか、それから技のインフレが起きないようにはどうするか、というところは気をつけました。また、後半で戦いに変化をつけられるように前半では技をセーブするなど、やはり全体を見て計算してはいます。その分、子ども時代から技が成長していくキャラクターに関しては、戦い方や技がどのように成長するのか、という面白さはあると思いますね。原作のスケールの大きさを潰さないようにするという点でも苦労はありました。

—キャラクターに関しては、どのような点を意識しましたか?
大西監督とは、キャラクターをどう膨らませていくかがこの作品で一番大事なところだ、と話していました。ですから、とにかくキャラクターたちを好きになってもらえれば、と願いながら書いていました。成尋衆については、どんな連中なのかわからない、人間なのかさえわからないキャラクターにあえてしている所があります。

—今回は、少年少女が登場したり、忍者たちの幼少期が描かれたりしますが、少年少女を描く上での難しさを教えてください。
大西まず、この作品で描かれている時代は今と違って情報にあふれているわけではないので、子どもたちは血なまぐさい世界にいつつも純真で素直な性格なんです。その"子どもらしさ"をキャラクターごとに考えるのが難しかったです。また、彼らの過去や背景を描こうとすると回想シーンはさらに年齢が幼くなり、台詞の語彙が限られたりするのも悩みどころでした。子どもたちはそれぞれに重い過去を背負ってますが、あまり過去がトラウマになっているような描き方にはならぬよう心がけたつもりです。

—特に描くのが難しかったキャラクターはいましたか?
大西八郎と響はずっと一緒にいるわけではなく、距離があったのでかなり苦労しました。

—離れているふたりでエピソードを作りドラマを生むのは難しいですよね。
大西そうなんです。逆に、主人公以外のキャラクターたちの子ども時代は書いていて楽しかったです。例えば、式部は昔お寺に預けられていたとか、原作の一節を膨らませて幼少期のドラマを紡いでいけたので。それから、私が脚本を担当した話数は涙と七弦が登場することが多かったこともあり、その2人は特に好きなキャラクターです。

—放映をご覧になってみての感想としては?
大西長い間、頭の中だけで動かしていたキャラクターが実際に画面の中で躍動するのを見るのは、いつもながら何ともいえぬ感慨があります。勿論、シナリオ段階でもっとこうすればよかったのでは、と思う部分はたくさんありますが、それもまたいつものことで・・・。「この方向で大丈夫と思ってOKを出したのだから」と監督にはおっしゃっていただけたので、とにかく視聴者の方々にこの先の展開を期待して貰える導入になっていればいいなと思ってます。

—2話以降はいかがでしたか?
大西2話は過去とも絡んでいく話になり、非常に難しかったところではありますが、前作の作品の力も借りて、いい塩梅で仕上がっていたように思いました。3話からは今回の敵である成尋衆が出てきたことで、主人公たちとの構図がはっきり見えてきましたよね。ストーリーが「敵、味方のチームがどう戦うか」という非常にシンプルな構図であるとわかって、これから視聴者の方はもっとのめり込みやすくなるかと思います。

—動きが付き、声がついたことで驚きがあったキャラクターはいますか?
大西こういう切り口か、と思ったのは涙です。キャピキャピ系のキャラクターにするのもありかと思ってその方向で書いていたのですが、思っていたよりも大人びた雰囲気になっていました。私としても「ああ、なるほど」と納得できましたね。自分の手を離れた脚本に絵や音がついてどんな形になっていくのか、そこを一視聴者として見られるのは脚本家の醍醐味でもあります。

—最後に、今後の見どころや楽しみ方を教えてください。
大西やはりアクションが見どころです。さまざまな「忍」たちの忍術がどう映像化されているのか、まずそこに注目していただきたいです。後半からはキャラクター性がはっきりと見えてくるので、第1クールでキャラクターをひと通り把握してもらったあと、好きなキャラクターを作ってもらえるとありがたいです。時代の中でいずれ消えゆくだろう「忍」たちが、最後の花をどう咲かせるか。時代小説ならではの滅びの美学と伝奇小説の奇想天外。双方併せ持ったこの作品、是非とも楽しんでいただければ、と思います。

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