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スペシャル

「バジリスク ~桜花忍法帖~」リレーインタビュー第7回
キャラクターデザイン・総作画監督 牧孝雄

—まず、今作のキャラクターデザインを担当されることになった経緯から教えていただけますか?
制作のセブン・アークス・ピクチャーズさんとは別の作品でご縁があり、そのプロデューサーさんからキャラクターデザインのオーディションのお話をいただいたのがきっかけです。

—牧さんとしてはオーディションや本編でどのようなデザインを心がけましたか?
オーディションでは「ラフに描いてみて」ということだったので、せがわまさき先生の原案を参考に、イメージが変わらないように、ただ、細い線よりも露骨な線がいいだろうと考えました。やはり、今のアニメーションの作業工程上、昔よりも動画さんの線がすごく細いんですよね。髪の毛くらいの線で描かれていることもあるのですが、そうなると画面上では露骨な感じにならないので、そこは意識しました。監督との打ち合わせでも「もう少しスタイリッシュに」という要望がありましたので、特に旧五宝連や五花撰のようにおじさんだったり人間離れしたりしたキャラクターでは影を厚めにするとか、場合によっては線を二重にして太くしています。

—監督から受けた要望としてはほかにどのようなものがありましたか?
「皮膚坊は二枚目すぎない感じで」とは言われました。作品のキーでもある人物ですが、あくまでもお坊さんですし、彼の印象が残りすぎてはいけないので。主人公である八郎と並ぶシーンもあるので、八郎が皮膚坊に食われないように、という意識はありました。

—サブキャラクターデザインとして小菅和久さんの名前もありますが、牧さんはどのあたりのキャラクターまでデザインを担当されていますか?
名前がないモブキャラクター以外の、メインキャラクターはなるべく自分がデザインするようにしました。前作の『甲賀忍法帖』に出てきたキャラクターたちは、自分が起こし直したり、手伝ってもらったり、という感じです。

—同一キャラクターでも幼少期と青年期があるなど、『桜花忍法帖』には幅広い年齢層のキャラクターが登場します。描き分けや統一感といった点で苦労はありましたか?
そうですね。過去の話が出てきて、幼少期より幼い5歳との描き分けも必要でしたから。幼少期と青年期はラフから監督に見ていただいていましたが、やっぱり等身の表現は難しいところがあったので、そこは最初にしっかり設計しておけばよかったな、と反省はしています。

—ご自身で描いていて印象に残っているキャラクターというと?
個人的には、現の性格と外面のギャップが面白かったです。シナリオを読ませていただいたとき、彼女が登場するシーンで印象に残ったところがあったので、デザインするときもそのシーンを考えながら描きました。あと、意外と滑婆はどの作画監督さんたちの絵も似ていて。キャラクターを作るとき、なるべく皆さんが描きやすいようにと思って線の足し引きをしているんですが、似せやすくデザインできたのかな、とは思いました。

—時代劇作品ならではの難しさというのはありましたか?
やはり着物は難しいですね。袖の部分とか。今回は日常芝居のシーンがあまりないのですが、多かったらもっと大変だったと思います。例えば、お茶(の湯飲み)を持ち上げて飲む、といった動作でも線の入れ方が変わってくるので、原画をかなり描かないと難しいだろうと思っていました。服装についても時代背景があるので、プロップデザインの岩畑(剛一)さんがいろいろと調べてくださった資料をみながら描いています。やはり女性は着物や髪型が時代によってかなり違いますから。

—原作にはないアニメオリジナルな部分で、牧さんのアイデアが採用されたものはありましたか?
いくつか採用していただきました。天信が「千手観音」で撒き菱を放つところは、原案通りではなく、自分なりに膨らませています。鯨飲の髪の毛もせがわ先生の絵よりも鋭くさせていただきました。これは、アニメにした際の描きやすさを考えて、ですが。ちなみに、鯨飲が「蛍烏賊」を使うときに汗が緑色に光るのは監督のアイデアで、とてもアニメのキャラクターらしい鯨飲になったと思います。

—武器や技についても牧さんがいくつかデザインされたのでしょうか?
武器や技は基本的に岩畑さんが設定を起こしています。監督が絵コンテにイメージを描いてはいますが。草薙一馬の天竪琴は、監督と岩畑さんがずっとディスカッションして、何パターンも練られていましたね。

—涅哩底王が召喚する魔獣については?
それも岩畑さんです。涅哩底王が僕で。岩畑さんは、(8話で)五郎左が使っていたスナイパーライフルや転寝の作る機械など、いろいろとデザインしていますが、打ち合わせをしながらどんどんとアイデアが出てくる方なんです。サブタイトルの書を書かれているのも岩畑さんです。

—今作に携わっていて、楽しいと感じた部分としてはどんなところがありますか?
岩畑さんからの資料をいただいてはいましたが、自分でもいろいろな本を見て、着物のしわの入り方などを勉強しながらデザインしていたんです。ああしよう、こうしようと自分で考えながら描いて、監督にそれを提示して、というやり取りは楽しかったです。

—キャラクターデザイン・総作画監督として、『桜花忍法帖』ではどのような魅力を感じとっていただきたいですか?
前作に比べて登場人物が増え、今作ではみんなで敵に立ち向かっていくという「チーム戦」の要素が大きくなりました。また、八郎と響、七弦と涙、転寝と滑婆……といった男女のペアで行動する場面がたくさん出てきます。そういった一致団結感やキャラクター同士のつながりが見えるシーンが多い点は魅力だと思っています。描いていても楽しかったです。今回は2クールという長い作品ですので、視聴者の皆さんにもそういった部分をじっくり見て、楽しんでいただければと思います。そんな彼らがこのあと、それぞれに見せ場が出てくると思います。どういった場面というのは詳しくは言いませんが(笑)、描き手としてはそこに注目していただけると嬉しいです。

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