スペシャル

「バジリスク ~桜花忍法帖~」リレーインタビュー第4回
徳川忠長役 岡野友佑

—忠長の第一印象はいかがでしたか?
岡野最初はお母さんが大好きで、エリート意識が強いダメな殿……というイメージだったんですが(笑)、これまで演じてきて実は忠長が一番普通の人間なんだと思うようになりました。怖いものがあれば素直に怖いと思うし、助けてほしいときははっきり助けを求める。すごく素直な人間なんですよね。自分の本心をあまりさらけ出さず、強く生きようとするキャラクターがほとんどの中、己の心情を一番素直に吐露しているのが人間的だなと思いました。

—忠長を演じる上で意識していることを教えてください。
岡野将軍家の人間なので、品の良さは意識するようにしています。ただ、それはあくまでも殿様としての対外的な振る舞いなので、ふいに自分の弱さをさらけ出してしまうという二面性があることは忘れないようにしています。

—岡野さんはメインキャラクターとして作品に参加するのは初めてだと伺いましたが。
岡野そうなんです! メインキャラクターを演じるのは初めてなので、最初の収録はとにかく緊張しました……。こんなにたくさんのセリフを話したことなんてなかったですし、僕のせいで収録が終わらなかったらどうしようと(笑)。その分、気合いを入れて臨みました。

—忠長はオーディションで決まったんですか?
岡野そうですね。ただ、受けたキャラクターは忠長とは別だったんです。まさか忠長役に決まるとは思っていなかったので、びっくりしました。実はオーディションを受けること自体、初めてで……。緊張しまくりだったこともあって、受かったときは本当に嬉しかったです。

—そうだったんですね。現在、声優デビューから何年目ぐらいなんですか?
岡野2年目です! まさか、こんなにたくさん喋る役をいきなりやらせていただけるとは思いませんでした。これだけのセリフ量と掛け合いがあると、本当に身になることばかりです。アフレコのあとに監督さんや共演者の方からアドバイスをいただけることもあるのですが、こちらがひとつ尋ねるとふたつ、みっつ、よっつと返してくださる方ばかりなので、最初にいただいたメインの役がこの作品なのはとても恵まれているなと実感しています。

—音響監督の横田知加子さんから指示されたことなどはありますか?
岡野恐怖や焦りといった感情が強く出る場面では、視聴者の方にしっかり届くように感情を出してくださいというディレクションをいただきました。実際、これまで台本のト書きに「ビビる忠長」という説明が20回ぐらいありましたし、ほかのキャラクターと差別化するためにも、そこは大事にして演じるようにしています。

—感情表現の幅が大きいキャラクターですが、今はもう慣れましたか?
岡野第3、4話ぐらいまではただ演じるだけで精一杯なところもありましたが、今では少しずつ余裕も出てきて楽しく演じられています。特に殿様口調で喋れるのが面白いですね! 普通、そんな喋り方をしないので、これが声優の醍醐味なんだなって感じています。アフレコ現場では「殿」と呼んでくださる方もいて、それも嬉し恥ずかしという感じです(笑)。

—リレーインタビュー第3回で横田さんにお話を聞いた際、岡野さんが第1話のとあるシーンで苦戦していたとお話しされていました。
岡野Bパートのラストですね! そこまでの収録が思ったより順調に進んでいたんですが、刀を振るうシーンでつまってしまって……。冷静に考えると刀を振り上げて下ろすという二段階の音が必要になるんですが、そのニュアンスが掴めず何回かやってもダメだったんです。そしたら横田さんが傘を持ってきてくださって、その場で傘を使って動きながら、声の出し方を確認させてもらいました。それでやっと掴むことができました。収録が終わったあとに、転寝役の三木(眞一郎)さんから丁寧なアドバイスをいただけたのも嬉しかったですね。二段階の動作なんだからひとつの動作で考えずに、別個のものとして考えてみなよ、と。収録のときは必死で落ち着いて考える余裕がなかったので、三木さんのアドバイスでちゃんと整理できてよかったです。

—素敵な先輩ですね。
岡野実は三木さんとお会いするのはこの現場が初めてだったんです。芝居に対して熱い想いをお持ちの方で、厳しくも優しいところが素敵だなと思いました。

—忠長はベテランの役者さんが演じられるキャラクターとの絡みも多いですよね。
岡野そうですね。ベテランの役者さんと掛け合うと、自分が思ってもみなかった素直な表現が出てくるのが楽しいですね。芝居の方向性を考えることは大事ですが、言い回しを決めるようなことはせず、キャラクターの感情に寄り添って相手にぶつかっていくことが何よりも大事で、そうすれば自然といい表現が生まれるんだと学ばせていただきました。

—そういった先輩方からアドバイスをもらうこともあるんですか?
岡野よくあります。鯨飲と掛け合ったときはチョーさんと席も近くて、お話を伺ったらいろいろ教えてくださったのを覚えています。成尋役の土師(孝也)さんもお話しした時に「芝居で個性を出すこと」について聞かせてくださって、本当にありがたかったです。緊張続きの現場ですが、その分得るものも大きいなと感じています。

—そして、第7話ではついに主人公の八郎とも相まみえました。
岡野八郎役の畠中祐君とはこの現場で初めてお会いしたんですが、学年も年齢も一緒ということでよく話をするんです。第6話の収録後も「(忠長と八郎が会うのは)来週だね、気合いを入れて頑張ろうね」と話しました。ただ、忠長が感情をさらけ出すのに対して、八郎はセリフも少なく感情を見せないキャラクターなので、その温度差のすり合わせが大変でした。苦労もしましたがその分、一緒に芝居を考えるのはとても楽しかったです。

—忠長の語気がどんどん強くなっていくところが印象的でした。
岡野忠長は殿様なので、今まで自分に突っかかってくる人間はいなかったと思うんです。なのに、八郎は忠長のお願いをきっぱり断った。その時の戸惑いであったり、怒りであったりという複雑な感情はしっかり出すようにしました。

—八郎の印象についてはいかがですか?
岡野単純にクールという言葉に収まらないところが魅力的ですね。忍としての覚悟や瞳術という宿命といったいろんなものを抱え、葛藤しているのがわかるので、もっと感情を出してほしいと思うこともありますが、だからこそ黙々と自分の信念に従って行動する姿がカッコいいなと思います。

—では最後に、第9話以降の見どころと岡野さんご自身の意気込みを聞かせてください。
岡野とんでもなく強い成尋衆に若手の忍者たちがいかに立ち向かっていくかというところが一番の見どころになると思います。その中で、伊賀甲賀の男女の間にも信頼関係や絆が生まれていくので、それがどう描かれていくのか注目していただけたら嬉しいです。忠長としては、このまま情けない感じで終わってしまうのか、それともどこかで頑張りを見せて将軍家の一人として誇り高く生きようとするのか、僕自身も楽しみにしています。一人の人間として精一杯生きようとする忠長をマイクを通して精一杯演じていきますので、最後まで応援よろしくお願いします!

戻る