スペシャル

「バジリスク ~桜花忍法帖~」リレーインタビュー第6回
甲賀八郎役 畠中祐

—畠中さんは第6話からのご出演ですが、それまでのストーリーについてどんな感想を持ちましたか?
畠中八郎と響ってこんなに重いものを背負っているんだって思いました。あんなに子どもであんなに一緒にいたのに、持って生まれた「血」に翻弄され、別々の道を歩まなければいけなくなった。なんて過酷なんだって。それでも、しっかり自分の道を進もうとする二人の姿がかっこいいですね。自分の気持ちに正直な響と、自分の気持ちよりも棟梁としての生き方を貫こうとする八郎、その違いはありますけど、二人とも大切な人のために戦おうとする姿が素敵だなって感じました。

—桜花に対する認識の違いにも性格が出ていましたよね。
畠中そうですね。響は二人なら乗り越えられるという考えですけど、八郎は絶対に危険なものとして認識しています。桜花があれほど強力なものでなかったら、もしかすると八郎もきっとこの力を制御して使いこなしてみせると考えたかもしれないですけど、そんなに生やさしいものではなかった。結果、響の思いもすべてシャットアウトして、自分一人で成尋との決着をつけるということになったので、あの桜花のシーンは僕としても心が苦しかったですね。

—アフレコ現場には第6話から入られたのですか?
畠中実は、スケジュールが合う範囲でしたが、第1話からアフレコ見学をさせてもらっていたんです。第1話はものすごく驚きましたね。子供時代の八郎を演じられている國立(幸)さんの芝居が、自分の考えていた芝居とほとんど一緒だったんです。だからこそ、國立さんの棟梁らしい落ち着いた八郎を見て、気が気じゃなかったというか。とても完成されていたので、自分はちゃんと八郎のイメージを芝居に落とし込めるだろうかと心配になりました。

—八郎のイメージについてもう少し詳しく教えていただけますか?
畠中大人になった八郎も年齢としてはまだ若いんですが、環境や経験、立場というものが現代の同年代とは全然違うので、今の時代でいう30代とかそれ以上の腰の座った人間なんだろうなと考えていました。その一方で、いろいろ悩みを抱えていることも伝わってきたんですよね。棟梁としての答えは決まっているし、仲間の思いには応えてあげられないけれど、決して無関心ではないと。仲間を思う気持ちは人一倍強いんです。無駄な血を流させたくない、みんなを守りたいという思いこそが、心を閉ざして一人で生きることを決意させたんだろうなと思いました。そういう意味ではすごく心が揺れているんです。

—それを少ない言葉で表現しないといけないわけですよね。
畠中ある意味、表現してはいけないところなのかなと。心の揺れを仲間に悟られてはいけないので、八郎としては頑なに閉ざさなければいけないんです。演じる上でも、ここが一番大変ですね。八郎のことを考えれば考えるほど気持ちを出したくなるけれど、逆に気持ちを閉ざさなければいけなくなるという。八郎がもどかしい思いをしているのと同じように、自分ももどかしくて(笑)。揺れる心を閉ざそうとする八郎とリンクできたらいいなとは思いますけど、なかなか難しいです。

—音響監督の横田知加子さんから何かディレクションはありましたか?
畠中ディレクションとはちょっと違うかもしれませんが、音的なアプローチの仕方というものを改めて学ばせてもらっています。僕の場合、役を演じるときって自分が感じたものを出すという芝居が多かったんです。むしろそういう部分を求められているのかなと感じるところもあったんですけど、この作品では別のアプローチが見たいと言われたんです。「役として喋るとはどういうことか」、「その声がどう聞こえるか」、もっともっと自分の音と向き合ってほしい、と。今は畠中というフィルターを通しすぎだとも言われました(笑)。でも、そういう芝居をしてきたのは事実なので、すごく新しいチャレンジをさせていただいているなと感じています。

—もう少し理論的に役を捉えるということですね。
畠中そうですね。たとえば、あるセリフを言ったときに「暗いです」と言われたことがあるんです。「暗い」と「物静か」は違うし、「暗い」と「淡々としている」というのも違う。心情的に暗くてもそれを感じさせないのが忍であり棟梁だし、もっとその違いに敏感になってほしいと。いや~、本当に難しいです!(苦笑) でも、新しい世界を見せてもらっているなって感覚がありますし、改めて芝居というものの面白さを実感しています。

—物語についても聞かせてください。第11話では響のもとに八郎が駆けつけました。
畠中まったく会話はなかったんですけど、八郎はきっと心を掻き乱されただろうなって思います。どれだけ心に壁を作ろうとしても、やっぱり八郎にとって響は愛しくて愛しくてしょうがない人なんです。でも、八郎はそんな響を守るために彼女から離れると決意していたので、気持ちを抑えなければいけない。だから、感情が表に出ないよう必死だったと思います。もし、ちょっとでも面と向かって話していたら今まで我慢してきたものが崩れて、それこそ桜花が発動してしまう……なんてことがあったかもしれないですね。

—八郎自身も辛かったと。
畠中辛かったと思います。だって、響が大人になってあんなにきれいになっているんですよ!(笑) 「こんなに美しい姿になって……!」って、きっと喜んでいたんじゃないかなぁ。まぁ、実際はそんな状況ではありませんでしたけど、「君と一緒にいられたらどれだけ幸せだろうか」という気持ちはあったと思います。

—畠中さんから見て、響はどんな女性ですか?
畠中すごく素直で優しいけれど、芯がしっかりしている子ですね。自分の気持ちに正直に生きているというのは一見、棟梁っぽくないと思われがちですけど、僕はそれがかえって棟梁っぽいと感じるんですよね。自分に嘘をつかないからこそ気持ちが揺らがないし、まわりもその思いについてきてくれるんだろうなって。そういう意味では、響と八郎って似ているんです。どっちも頑固(笑)。ただ、自分の感情に従う頑固さと自分の論理に従う頑固さという違いがあるのが面白いですね。

—響は子どもの頃からずっと素直ですよね。
畠中村から外に出られない生活を強いられ、自分の宿命に翻弄されつつも、あの素直さを失っていないというのはすごいです。変に大人ぶってなく、割り切れないものは割り切れないという姿勢で、今も純粋な気持ちでぶつかっていこうとする。いつか八郎がその気持ちを受け止めてくれたらいいですね。

—また、第12話では七弦と涙を助ける場面もありました。
畠中八郎の活躍も嬉しかったんですけど、七弦とのコンビプレーが最高でした。ずっと離れていたのに、ちゃんと相手の能力を理解しているし、信頼もしているんだなって。だからこそこのあとも一緒に戦ってほしいと思うんですけど、八郎には八郎の決めたことがあり、答えが決まっているので……難しいでしょうね。

—では、第13話以降の見どころを教えていただけますでしょうか?
畠中見どころは八郎がいかに成尋にぶつかっていくのかというところと、今まで遠ざけてきた仲間たちの思いにどう向き合うかというところですね。どちらもその瞬間が必ずやってきます。そのときに八郎が一体どんな選択をするのか。どうしたって一人で戦うということには限界がきますし、変わらなければいけないときがきっと訪れます。そのときに見せる選択、決断をぜひ見守っていただきたいです。

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