「バジリスク ~桜花忍法帖~」リレーインタビュー第12回
甲賀八郎役 畠中祐 & 伊賀響役 水瀬いのり
―最終話のアフレコを終えての率直な感想を聞かせてください。
畠中あっという間だったなというのが正直な感想です。ずっと悩み続けた八郎であり、自分でもありましたが、八郎の決意が固まった第18話ぐらいからは自分でも八郎と正面から向き合えるようになり、より八郎を演じるのが楽しくなりました。だからこそなのか、そこからは一瞬でしたね。
水瀬アフレコがはじまったときは、内容も現場の空気も含めて、この緊張感、緊迫感が長い期間続いていくんだろうなと思っていたんですが、気付けばあっという間に最終回を迎えていて、とても不思議な気持ちです。尊敬する先輩方、それもたくさんの先輩方とご一緒できる場でもあったので、終わってしまう寂しさもありました。
―第2クールでの八郎と響の境遇についてはいかがでしたか?
畠中響と八郎は掛け合いという掛け合いがなかったですよね(笑)。
水瀬幼少期を演じられていた國立さんとは前半のほうで掛け合いがありましたけど、二人が成長してからは、同じ現場にいながらも一緒にマイク前に立つということが後半までまったくなかったですからね。
畠中八郎を待つ響と目的を成し遂げようとする八郎という立場なので仕方ないといえば仕方ないですけど……。
水瀬私たちも二人が再会するのを今か今かと待っていました。
畠中個人的に予想外だったのは、第15話で八郎が響に愛を伝えるシーンですね。実はオーディションでもあったセリフで、本編に出てくるのをずっと楽しみにしていたんです。でも、実際は成尋が八郎に化けているだけだった(笑)。
水瀬私もずっと楽しみだったんですよ!
畠中こんなに濃厚なシーン、今までやったことないぞってすごくワクワクしていたんですけど、「成尋かよ!」って(笑)。
水瀬響としても目の前にいたのは成尋だったのかと思うとぞっとします……!
—クライマックスに近づくにつれ、二人の思いがどんどん強くなっていきましたが、その変化についてどんな思いを抱きましたか?
畠中第2クールが始まった頃の八郎は鎧でガチガチに固めてみたものの、中身はまだ揺れ動いているという印象でした。悩みすぎるがゆえ、優しすぎるがゆえに、棟梁という部分とは別の部分で頑固になってしまった。ですが、第18話以降、自分が棟梁として仲間の上に立つという覚悟を持つようになり、響としっかり向き合うと決めてからは、彼の行動や目的がよりストレートに伝わってくるようになったので、その真っ直ぐさを大切にしながら演じるようにしました。
水瀬第2クールの響は、最初から棟梁としての覚悟が強く宿っていました。自分を朧さんだと思い込むことはありましたが、幼少期の頃から比べてとても強い女性に成長しているなと、きっと皆さんにも感じていただけたのではないかと思います。そこからさらに覚悟を決めた最終話。私自身、あの決断と行動を見て、改めてただ守られているだけの女の子ではない、強い女性なんだと感じました。
畠中響は、一貫して一番思いが強かった女の子ですよね。
水瀬最初から最後までずっと八郎を見ていました。
畠中それでも、自分の目を潰すという選択はすさまじすぎます。
—その最終話について、おふたりの感想をもう少し詳しく聞かせてください。
畠中結局、最後の最後まで桜花に振り回された二人ですが、それでも、自分を傷つけてでも、二人は自分たちの関係を守りたかったんですよね。お互いの思いの強さが行動によって示されて、こんなに愛し合っていたのにってすごく切なくなりました。ある意味、美しいシーンではあるんですけど、もどかしかったです。
水瀬台本を読んで覚悟はしつつも、実際に二人の選択を目の当たりにすると、ただただすごいとしか言いようがありませんでした。誰かを守る、誰かと一緒にいる、誰かを愛する……それって人によって伝え方や表現の仕方が全然違うと思うんです。でも、響と八郎にとっての表現の仕方はこれなんだって、胸を打たれました。自分の痛みなんて本当に小さなことなんでしょうね。私のようなゆとり世代にはちょっと無理だなと思ってしまいました……。
畠中いやいやいや、こんなの誰だって無理ですよ!(笑)
水瀬でも、そこまでの強い思いを抱ける相手がいるというのは、ある意味羨ましいことでもあるなって思うんです。ただ、その一方で自分だったら果たしてできるのかと常に考えてしまうんですよね。
畠中確かに、すごいと思いつつも、どうしても自分の目盛りで測っちゃいますよね。でも、そうやって問いかけてくる力があるというのが、この作品の持つ魅力なんだと思います。
—二人が再会して向き合えたのはわずかな時間でしたが、本当に濃密でした。
水瀬最後に八郎の姿が見えなかったのはとても切なかったです。
畠中でも、きっと響だったらこれからも強く生きられると思いますよ。
水瀬まぶしい風も吹いていましたしね。
畠中皮膚坊が最後に持っていきましたけど(笑)、でも本当に次の世代へという希望がある終わり方でよかったなと思いました。
—成尋衆との戦いについてはいかがでしたか?
畠中成尋はとにかくしつこかったです! 何度死んでも蘇る、まさに最強の敵でした。
水瀬粘着質でしたね(笑)。しかも合体技が強すぎて、ちょっとズルいなって思ったくらいです。どうすれば勝てるんだろうってずっと不安でした。
畠中でも、成尋って実はすごくシンプルな考え方なんですよね。かりそめの泰平を終わらせて、自分が望む真の泰平がほしい、と。そのために一度、すべてを壊す。何かものすごい政治思想に突き動かされているわけでもなく、ただただシンプルで、それがかえって怖かったですね。
—また、新甲賀五宝連、伊賀五花撰も後半は大活躍しました。
畠中八郎としては最後まで彼らを悩ませてしまいました。才蔵役の德石(勝大)さんが言っていたんですが、才蔵たちもずっと揺れ動いていたんですよね。なぜなら、棟梁がいなかったから。やっぱり忍にとって棟梁がいなければ、何をなすべきなのかわからないものだと思うんです。だからこそ、第18話でやっとみんなを率いることができたのは……結果としてみんなを死なせてしまいましたけど、ひとつ役目を果たせたのかなと思います。
水瀬棟梁という存在は仲間に死が迫ろうが、守られることも使命としてあるんですよね。そういう意味では、改めて響は最後までみんなに守られていたんだなと思います。みんな散ってしまいましたけど、ひとつ何よりだなと思ったのは、みんなの散り際が美しかったことですね。特に現と涙は二人の思いが重なるとても温かい最期でしたし、蓮はとても辛かったけれど、最後まで自分の信念を貫き通して……。みんないなくなってしまったのは悲しいです。でも、みんながいてくれたからこそ希望に繋がったので、そこは心から感謝したいです。
—では最後に、最終話までご覧になってくれたファンの方に一言お願いします。
水瀬毎回起こる新たな展開に、早く次の話数の収録がしたいという気持ちと、もう誰も失いたくないから来てほしくないという気持ちがせめぎ合うような、とても刺激的な約半年間をすごさせてもらいました。この作品は生きることと死ぬことの尊さと美しさを深く描いた作品です。また第1話から見直してぜひキャラクターたちの生き様を見ていただきたいですし、これからもキャラクターたちを愛してください。
畠中時代であったり、上に立つ者であったり、さまざまなことに翻弄されながらも、忍たちは一人一人、力強く生きてきました。その中で彼らが見せた悩み、決意、選択を改めて見返していただけたら、きっと彼らの覚悟もまた報われるのではないかなと思います。それが一人の忍を演じたものとして、一番幸せなことです。本当にありがとうございました。